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ビタミンDとがん ~乳がん編~
~ビタミンDが低いと乳がんが増えるの?~
これまで当ブログでは、ビタミンDの役割や、インフルエンザなど感染症との関連についてご紹介してきました。
今回は少し切り口を変えて、「ビタミンDと乳がん」についてお話しします。
皆さんが「なりたくない病気」として思い浮かべるものの代表に、やはりがんがあります。
その中でも乳がんは女性に多いがんとして関心が高く、日常診療の中でも話題になることが少なくありません。
「ビタミンDが低いと乳がんが増えるの?」
この疑問に対して、現時点で研究は何を示しているのかを整理してみます。

1. 「ビタミンD濃度」とは?
一般に「ビタミンDが足りている/足りない」を評価する際には、血液検査の
25(OH)D(25-ヒドロキシビタミンD)ng/mL
という値を用います。いわゆる「ビタミンD濃度」と言われるのはこの指標です。
2. 研究紹介:乳がん発症との関連を調べた論文
今回紹介するのは、Environmental Health Perspectivesに掲載された前向き研究です。
O’Brien KM, et al. Serum Vitamin D and Risk of Breast Cancer within Five Years. Environ Health Perspect. 2017
登録時に血中ビタミンD濃度(25(OH)D)を測定したうえで、その後の乳がん発症を追跡(最長5年)しています。
参加者:50,884人
年齢:35〜74歳
登録時は乳がんなし、追跡中の新規発症を評価

3. 結果:ビタミンDが高い群ほど、乳がんが少ない傾向(全体)
研究では血中25(OH)D(ビタミンD濃度)を四分位(4つのグループ)に分けて比較しています。具体的には、
Q1:0〜24.6 ng/mL
Q2:24.6〜31.4 ng/mL
Q3:31.4〜38.0 ng/mL
Q4:38.4 ng/mL超
の4群です。
最も低い群(Q1)を基準にして比較すると、最も高い群(Q4)では乳がん発症が少なく、
全体:HR 0.79(95%CI 0.63–0.98)
でした。
ここでHR(ハザード比)は「発症しやすさの比」で、1.0が“差なし”を意味します。
HR 0.79は、低ビタミンD群に比べて乳がん発症が約21%少ないという推定になります。
4. とくに閉経後では関連が強めに出た
同じ研究では「閉経前」「閉経後」に分けた解析も行われています。
閉経後では、
閉経後:HR 0.72(95%CI 0.56–0.92)
と報告されました。
HR 0.72は、低ビタミンD群に比べて乳がん発症が約28%少ないという推定です。
まとめ
今回紹介した研究では、血中ビタミンD(25(OH)D)が高い人ほど、乳がんの発症が少ない傾向が報告されています。
全体で乳がんの発症が約2割少ない(HR 0.79)さらに閉経後の女性では、乳がんの発症が約3割少ない(HR 0.72)という結果でした。
つまりこの研究からは、
「ビタミンDが十分ある人の方が、乳がんが少ない傾向がある」
ということが読み取れます。

次回は、同じビタミンDの中でも特にデータが多いとされる「大腸がん」について、研究をご紹介しながら、分かりやすく整理していく予定です。
またその中で、「こうした研究結果をどのように受け止めればいいのか」という点に加えて、私個人としてはどのように考えているのかについても、お話ししたいと思います。
参考文献
O’Brien KM, et al. Serum Vitamin D and Risk of Breast Cancer within Five Years. Environmental Health Perspectives. 2017.
函館・みはら循環器内科
院長 佐藤
2026.1.21